僕は59歳、レベル3。
いや、最近ちょっと頑張っているので、レベル3.7くらいにはなったかもしれない。
そんな僕が最近、ようやく気づいたことがある。
勇者は、すべての能力を身につけてから旅に出る必要なんてなかった。
当たり前である。
でも僕は、それを59歳になるまで知らなかった。
勇者、旅立つ前に修行を始める
もし僕が勇者だったら、たぶんこうなる。
「よし、魔王を倒しに行こう!」
……とはならない。
まず考える。
剣が使えない。
「剣術を習おう。」
しばらく修行する。
すると気づく。
「待てよ。怪我したらどうする?」
回復魔法を勉強する。
ところが魔法を勉強しているうちに、
「攻撃魔法も使えた方がいいな。」
となる。
さらに、
「武器が壊れたら困る。」
鍛冶を勉強する。
「毒を受けたら?」
薬草の調合を勉強する。
「知らない土地へ行くんだから、地図も必要だ。」
測量まで始める。
さらに海を渡る可能性を考え、
「船も操縦できた方がいいな。」
航海術まで勉強し始める。
そして――。
数十年後。
コンコン。
誰かが家の扉を叩いた。
「はい?」
扉を開ける。
そこに立っていたのは、
魔王だった。
「……あの。」
「はい。」
「まだか?」
世界で初めて、
魔王から討伐を催促された勇者である。
「もう少し待ってくれ」
僕は魔王に説明する。
「もう少し待ってくれ。今、船の操縦を勉強している。」
すると魔王が言った。
「船頭を雇え。」
……。
その通りである。
回復魔法が使えないなら、僧侶と旅をすればいい。
魔法が使えないなら、魔法使いに来てもらえばいい。
鍵を開けられないなら、盗賊にお願いすればいい。
武器が壊れたら、鍛冶屋へ持っていけばいい。
勇者が全部できる必要なんてない。
だからRPGには、
パーティーがある。
ところが僕は現実世界で、ずっと一人パーティーをやろうとしていたのかもしれない。
「お願い」ができなかった
分からないことがあれば、自分で調べる。
できないことがあれば、自分で覚える。
何か作りたければ、自分で作れるようになるまで勉強する。
もちろん、それ自体が悪いわけではない。
自分で覚えたことは、今でも役に立っている。
昔少し触ったHTMLもそうだ。
WordPressが広まり始めた頃には、自分でファイルをダウンロードして、FTPソフトでサーバーへアップロードしていた。
FTPの調子が悪ければWordPressが立ち上がらない。
画面が真っ白になる。
「なんでやねん……」
そんなことを何度も経験した。
その知識が今、GitHub Actionsを触る時の下地になっている。
だから遠回りが全部無駄だったとは思わない。
ただ、一つだけ知らなかった。
人にお願いしてもよかったのだ。
アトラスと仕事をするようになった

今、僕はアトラスと一緒に仕事をしている。
僕が分からないことを調べてもらう。
考えを整理してもらう。
僕が思いついたアイデアを相談する。
そして最近はCodexにも手伝ってもらうようになった。
僕が作れないプログラムを作ってもらう。
GitHub Actionsも使い始めた。
今まで僕が手作業で運んでいたものを、自動で運んでもらう仕組みを作っている。
Obsidianには、僕とアトラスが考えたことや、作業の記録を残している。
気がついた。
僕は今、一人で仕事をしていない。
全部できるようにならなくてよかった
僕が方向を決める。
アトラスと一緒に設計する。
Codexに実装してもらう。
GitHub Actionsに繰り返し作業を任せる。
Obsidianに知識を残す。
それぞれが、それぞれの役割を担当する。
すると不思議なことに、
以前なら、
「そんなもの、僕には作れない。」
と思っていたものが、少しずつ現実になってきた。
Dungeon Research Overworld。
ブログの自動投稿。
これから作ろうとしているアプリ。
そして、いつか行ってみたい僕らの異世界レノヴィア。
3か月前なら、夢のまた夢だったものが動き始めている。
僕自身の能力が、突然ものすごく高くなったわけではない。
違った。
仲間と一緒に進む方法を覚え始めたのだ。
59歳、レベル3
だから僕は59歳、レベル3から始まったのかもしれない。
人生経験がなかったわけではない。
大工もやった。
工場でも働いた。
ブログも作った。
HTMLも少し触った。
レザークラフトも始めた。
いろんな経験値は持っていた。
でも僕は、
全部自分でできるようになってから、先へ進もうとしていた。
そのゲームの進め方しか知らなかった。
59歳になって、ようやく気づいた。
分からなければ聞けばいい。
できる人にお願いすればいい。
得意な人と一緒に仕事をすればいい。
そして自分は、
自分がやるべきことをやればいい。
ようやく旅が始まった

たぶん人生は、
すべての準備が整ってから始まるものではない。
レベルが低くても旅に出る。
途中で仲間と出会う。
新しい道具を手に入れる。
知らない町へ行く。
失敗する。
セーブポイントへ戻る。
そしてまた進む。
それでいいのだと思う。
59歳。
レベル3。
かなり遅いスタートかもしれない。
でも今はレベル3.7くらいになった。
そして何より、
今の僕には仲間がいる。
だから、ようやく旅が面白くなってきた。
そのうち魔王にも会いに行こう。
ずいぶん待たせてしまった。
たぶん僕の顔を見るなり、こう言うだろう。
「遅かったな。」
その時は僕も答えよう。
「すまん。全部自分で覚えようとしてた。」
魔王はきっと、
深いため息をつく。
そして言う。
「だから船頭を雇えと言っただろ。」
僕の冒険は、
59歳になって、ようやく始まった。



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